テーマ本の紹介
『弱者の居場所がない社会 ~貧困・格差と社会的包摂~』

すくらむ21インターンシップ生

書籍基本情報

『弱者の居場所がない社会 ~貧困・格差と社会的包摂~』 
阿部彩 著 講談社現代新書 2011年

書籍の内容紹介と論評

前著「子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)」で貧困研究の第一人者と認識された著者が、今度はホームレスの問題を扱う。ホームレス支援のボランティアをしてきた実際の経験から、様々なエピソードを交えつつ、経済的貧困とともに社会がホームレスを承認し、存在意義、役割、居場所を社会の中に提供する「社会的包摂」が必要だと指摘する。ホームレスは見た感じ、何もしていないように見えるが、自転車の整理やホームレス仲間の面倒を見たり、仲間内で役割や居場所を作っていることが多いことを著者は自身の経験から明らかにする。机上だけじゃなく、ホームレスと直に接して学んでいる。以上の点を踏まえ著者はこれからの社会の有り方について提言している。彼女が提示する今後の社会のあり方というのは「社会のユニバーサル・デザイン化」である。“最も生活が困難な人に焦点をあわせた社会は、すべての人にとって暮らしやすい”という発想で、労働や福祉をはじめとする社会政策を構築しようというものだ。こうした視点からの政策は日本社会の免疫力を高める”と主張しており、超高齢、人口減少、財政悪化、世界的な経済危機のリスクや次なる大震災といった要因により将来の不安が高まる中、「社会のユニバーサル・デザイン化」が我々の国の社会政策の基本理念として根付く必要があると議論を展開している。

格差が大きい社会に住むと、格差の下方に転落することによる心理的打撃が大きく、富裕層の人は、社会的地位を守ろうと躍起になる。貧困層の人は強い劣等感や、自己否定感を抱くことになる。その際に人々は攻撃的になり、人間不信になるといった人間関係の悪化をもたらす。その結果として差別が助長され、地域や社会全体のつながりが希薄になる。格差の大きい社会に生活する人々は強いストレスにさらされ続け、その結果として健康を害し、死亡率も上がってしまう。これを「格差極悪論」という。このような社会を是正するために、現在行われている社会保障をさらに手厚くするだけでは不十分だと著者は述べる。また、弱者に対する「社会的包摂」が必要であり、弱者にも役割、又は出番が存在し、人間としての尊厳が確保される、「弱者の居場所のある社会」の構築を目指すことが必要だと結論づけている。この社会が実現すれば社会的な立場の弱い女性や子ども、高齢者、ホームレスの地位の確立を助け全ての人に住みやすい環境になると思う。またそのような社会が今後の日本に必要になると私は考える。


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