女性起業家インタビュー(小山久枝さん)

VECTOR株式会社
代表取締役社長 小山久枝さん


<プロフィール>
山梨県出身。大学卒業後、教育関係の出版社に就職。その後は編集プロダクション、学習塾の塾長など、教育関係にて広告宣伝、編集、マネジメントなどを経験し、2010 年4月、中学時代の同級生とその知人とともにVECTOR(株)を設立。サービスロボットの企画開発・販売、商・工業デザインの企画、介護業界の人材育成などを手がけている。

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平成27年11月11日(水)に開催された「かわさき女性起業家フォーラム」のパネルディスカッション時に、川崎市内で活躍中の女性起業家として、VECTOR株式会社代表取締役社長の小山久枝さんに登壇いただき、創業の経緯や課題解決法など体験談をふまえて語っていただきました。

起業の経緯、事業内容

 2010年に起業し、6年目を迎え、現在60歳です。シニア女性の起業という点が特徴ですが、中学時代の同級生(男性)と、彼の知人の計3名で起業をしました。
 現在は夫婦二人の生活となりましたが、起業時は二人の子や母、老猫とも一緒に暮らしていたので仕事以外の家庭での役割も多く大変でした。しかし、下の子が大学を卒業したので、何となく重い荷物を下ろして背中に羽が生えたような感覚で、親としてある程度の責任を果たし、「ようやく自分の好きなことが出来る」という軽やかな気持ちでしたね。
 事業内容ですが、現在はロボットを作っています。私は元々文系で専門書の編集をしており、エンジニアではありませんでしたが、起業仲間の一人が元三菱自動車のデザイナー、もう一人が元日産自動車のモデラーだったので、洋服でいうとデザイナーとパタンナーがいたという感じでしょうか。これまでに6種類20台程度のロボットを作りましたが、取材や営業を受けるなかで、「人間ロボットpepperの唯一の対抗馬になり得るかも」と言われました。現在は4名で頑張っています。

メンバーの拠点が離れているからこその工夫

 会議その他のツールとして、私たち起業メンバーの拠点が、川崎、山梨、愛知とそれぞれ離れているので、この歳にしてありとあらゆる新しいものを使いました。例えば会議はSkype、メールやLineはもちろんですが、一番効率の良い方法を模索しました。少し前からはGoogle Appsを使用しています。デザインなどのデータはメールでの送受信だと容量が大きくて不便ですよね、宅ファイル便なども使いましたが、届かない、ファイルが開かない等のトラブルもあり、アップロードするのが一番良いと共有ファイルを使用することで解決しました。

困ったときの相談相手を見つけておくことも重要

 「ヒト・モノ・カネ」と言うけれども、順番でいうと「カネ・ヒト・モノ」ではないかと思う程、ものづくりには資金が必要だと実感しています。特に私たちの場合はロボットなので多額の初期費用がかかり、納品後から収入までの資金繰りには苦労しています。ものづくり及び販売を考えている場合は、事前に資金を用意しておいた方が良いですね。
 また、私は55歳で起業しましたが、その間、「お金」について学ぶ機会がありませんでした。ジェンダーにも関わってきますが、私が育った家庭も、会社を経営していた父は、女性は将来結婚して家庭を築くのを良しとし、お金についても余計なことを考えるなという思想の人でした。また、お金の使い方や投資、また事業の見つけ方などビジネスに関するノウハウも学校教育の中では学びませんし教わる機会もありませんでした。夫もサラリーマンで融資等についての知識もないので、本当に困ったときに相談する人がいませんでした。奥の手があることもわからず、一人でPDCAサイクルを考えていました。ですので、相談相手を見つけておくということも大切だと思っています。

信頼・責任を持つために法人化

 起業当時は、新会社法により1円の資本金でも株式会社の設立が可能でしたが、私たちは、法人を持たない形でスタートしました。最初は営業をしても「高い」「重い」「サイズが大きい」等、課題を突きつけられました。しかし、その課題を解消すれば売れるというわけでもなく、相手方は「買わない」という言葉を別の表現で私たちに伝えたに過ぎないのですが、当時の自分たちはそのことにも気付きませんでした。
 後に、購入を検討してくれた方と取引をするうえで「法人ではないのか」と言われたのを機に、社会的信用の向上も考え、法人化を決意しました。提出資料の中に「資本金」という欄がありますが、いくら1円で会社を設立できるといっても1円という記入では格好が悪いので、300万円を資本金にしました。あっという間になくなりましたけどね。

活用した市内の創業支援メニュー

 情報収集しようと、まずインターネットで地元川崎の創業支援(補助金)を検索しました。今でこそ川崎市内で創業支援策や融資制度が多くありますが、当時は景気が悪くサポートのない時期だったようで、川崎市にも神奈川県にもありませんでした(笑)。唯一、横浜市で女性起業家へ20万円の補助金制度がありましたが、結局補助金申請も諦めました。そんなときに、麻生区役所のチラシ配架場所で、川崎市男女共同参画センター(すくらむ21)が主催する「女性起業家セミナー」という文字が目に入ったんですね。チラシにはステップアップ編と書いてあったので、ビギナー編もあったのかなと思いながらも躊躇わずに申し込み、事業計画書や収支の予算書の書き方などを学びました。当時一緒に学んだ仲間数名とは、今でも連絡をとっています。
 それから、日本政策金融公庫へ融資の相談に行ったのですが、結果として融資を受けることができませんでした。実績を積むためにお金が必要なのに、そのお金がないから融資の相談に行くと実績を求められる・・・という難しいところではありますが、当時は自分を客観視できてなかったわけです。融資を断られたとき、「看板には<貸します>と大きく掲げているのに、行くと<貸しません>なんて、何よ!」と、ビルを出たときに、持参した資料をビリビリに破ってしまいたい気分でした。しかし、冷静になったときに、自分自身及び会社が評価を受けるところにまだ達していないというところで模索しましたし、悔しい思いが力に変わったので、今となっては良い経験だったと思っています。
 その後、川崎市の緊急雇用基金事業という大きな支援をいただいたのですが、その補助金でものづくりの展示をし、それを契機に別の補助金を受けることができるようにもなりました。申請書類のなかに「過去に受給した補助金」の記入欄がありますが、たとえ小さな額だとしても活用した市の支援メニュー数が多いと、外部からの評価として「この会社は市が認める、応援している会社」と、審査される上でもプラスになるのではと思いますね。
 ものづくり補助金を受給したときは、日本政策金融公庫さんから声を掛けてもらい融資をしていただきました。最初に融資を受けられなかった頃から4年かかりましたが、やっとうちの会社も認められるようになったかなと思いましたね(笑)。

継続のポイント、今後の展開

 近年、中小企業の経営者同士のつながりができてきて、ある会社の社長に会った際に「会社は<ご飯>と<おかず>で成り立つけれど、小山さんのロボット試作は、僕にはまだ<おかず>にみえるから、メインとなる<ご飯>探しをした方がいいよ」と言われました。
 私はこれからロボットは伸びていくマーケティングと考えています。これまで私たちの会社は、デザインと試作しかしていませんでした。そこで、量産と開発を目指すために、10人くらいの大学教授とネットワークを持ち、本社が八王子で福島県に多くの工場を持ち震災後もロボット事業で立て直しを図っている株式会社菊池製作所というロボット製作会社の社長に「ロボットの量産をしたい」と直談判して、7月に新しくSOCIAL ROBOTICS株式会社を設立しました。ありがたいことに、東京都の産技研の採択を受け、2020年のオリンピック時には私たちのロボットが都庁などで動くことになると思います。
 今後は、ロボットの量産と販売という部分を<ご飯>にしていけたらと考えています。毎月、少なくともこれで経費が賄えるというご飯的な事業と、これが当たればすごいかもというおかず的な事業ができるようになれば良いですね。最初はどうしても<おかず>ばかりになりがちで、楽しい時期でもありますが、たとえ面白くなくても、毎月必ず入ってくる定番品を持つということも事業継続には大事なことであり、私の課題でもあります。
 また、私たちのような小さな企業に対し熱心に働きかけてくれる大手会社からの営業活動を通じて、社の方針に合致すれば、取引先の規模の大小は関係なく相手は動いてくれることを学びました。外部から当社がどのように見えるかを意識して、今後も前に進んでいかなければと思っています。ロボット業界に所属するのは、ほぼ男性で、会議に出ても女性は私一人ということがほとんどです。しかし、機器を使うのは家庭の中でも圧倒的に女性が多いので、私は女性の視点をいかに出せるか、消費者の視点でいかに作ることができるかということが大事だと思っています。
 「チャンス」が訪れるときというのは一瞬です。迷うことなく求めるとチャンスを迎えることは出来ますが、求めていないと、いざチャンスが来たときに掴むことは出来ず、逃してしまいます。例え失敗しても何ということはありませんので、これから起業する皆さんには、勇気を出して「チャンスよ、来い!」という感じで突き進んでいって欲しいと思います。

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