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『自由に考え、自由に学ぶ――山川菊栄の生涯』

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鈴木裕子著『自由に考え、自由に学ぶ――山川菊栄の生涯』(労働大学 2006年)を読んで

本書を読み終えて、まず、女性解放活動が許され、比較的自由に発言できた時代、大正デモクラシーに非常に興味がわいた。明治時代は富国強兵を国策に掲げ、女性が子どもを産み育て、家を守ることを期待される家父長制のもと、女性が自由に発言できる風潮はなかったはずである。この件に関しては多くの出版物があると思われるので、早速に読み、知識を得たいと思っている。

 山川菊栄の生涯を読むなかで、女性解放に力を注いだ同時代の活動家の考えや役割、活動家間の関係も理解できた。その中には市川房枝や平塚らいてう等がおり、例えば市川房江の活動の原点は家父長制に対する疑問や、女性だから我慢しなければならないという家庭の状況が深く影響していたことも知ることが出来た。

 他方で、山川菊栄の場合には父は先取的でありまた不在がちで、母と姉の穏やかな家庭環境であったとあり、活動家の中では特異な環境で育成されたと感じ、何に刺激を受けて活動家になったのか、興味を引いた。ただ、女学校時には、良妻賢母教育には反発し、女子英学塾(現 津田塾大学)の入試の作文に「抱負は女性解放のために働くこと」と記している。
山川菊栄を社会科学・社会主義へと目を開かせたのは、女子英学塾の学生だった時代に富士瓦斯紡績工場を見学にいき、女工たちが氷のようながらんとした部屋に集められ、考えもないまま救世軍の話すことに感心して聴いている、空虚な暗い鈍いその表情だったとある。「あのごうごうとなる機械のそばで一晩中睡〔ねむ〕らずに働き、生血をすわれて青ざめた少女たちの生活がなんで神の恩寵であり、感謝に値するというのか」と、憤りに体が震えたとあった。
 それを読み、わたしも明治・大正の女工の置かれた状況、本、ドキュメンタリーを思い出し、病気(結核)になれば、ぼろきれのように扱われる工員に対し、人間としての尊厳を無視された悲しさを思い、菊栄の感じた思いと共に胸が締めつけられるような思いになった。

 山川菊栄は、ペンを持って、「母性保護論争」「廃娼論争」「社会主義論争」「産児調節論争」へと関わっていく。その論理の根底には、社会主義に立つ女性解放の理論を示すと共に、高齢者や障害者などの「社会的弱者」が人としてその尊厳が保たれるべきであること、基本的人権の尊重を主張したこととあり、《高齢者の問題は女性の問題》という認識を打ち出したとありました。この時代に、多様な社会、多様な方々が共にある社会を理論の根底においていたということを知り、わたしは共感し、大きな感動を得ました。

 そして、山川菊栄の論評は、時勢に対する知識が豊富で、論理が厳正で、非常に鋭利な観察を持っているとありました。わたしは、批評をする際、ともすると経験知や現象からの判断で物事を捉えがちですが、山川菊栄は社会全体の仕組みから見ることができる人であり、その視点が事象の究極の課題発見につながり、対策が見えてくるのだと理解できました。
 この本に触れたことで、女性解放活動に関わった方々の関連を知り、黎明期の時代を知ることが出来、「このままではだめだ、何とかしなくては」と、とても刺激を受けました。 

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