H20年度 かわさきの職業人インタビュー

3つの幸せが同時に得られる 子育ての知恵が集う「ままとんきっず」

NPO法人 ままとんきっず
理事長:有北いくこ氏

創立の目的はなんですか。

5人で始めたのですが、15年前に地域では子育て情報が少なかったので、自分達に必要な情報を集めて、同じようなお母さんたちに発信しようと思ったからです。すると非常に反響がありました。事業が少しずつ増えていくとどんどん関わるメンバーが増えてきて、拠点となる場所が必要となったので施設をつくることになったのです。

主な利用者はどのような方々ですか。

平日の利用者は主婦が多いです。
最近では育休で利用し、復帰する人も多いです。また一時的に仕事を辞めた人が、ままとんきっずで刺激を受け、癒され、社会復帰したりもしています。ここを利用する方は、だいたい0歳~3歳のお子さんを連れている方なので、約3年間です。3年間経つといらっしゃらなくなりますね。ただ、スタッフとして残る方はいます。

保育園との違いは何ですか。

子どもを預かる場所ではなく、母親を支援する場所という考え方です。ただ一時預かりやグループ保育もあるので、保育園的側面もあります。また休日の公立幼稚園を貸して頂き、育児園という親子プログラムも行っています。休日なので男性もかなり参加していらっしゃいます。

主な事業内容は何ですか。

子育て支援です。最近の母親たちは、少子化で乳幼児を見る機会を持てないまま赤ちゃんを産んで、赤ちゃんってこれかぁと感じます。はじめて目の前の子どもとなかで育児書を一生懸命読んでもわからない。この地域は核家族、夫婦2 人で子育てしている方が非常に多いので、育児不安もすごいのです。もうちょっと育児の知恵を引き継いでいかないとかわいそうだと思います。子どもに対する接し方や母親間のつきあい方がわからないため、不安を抱いている人が多いです。その不安を解消するためにも、コミュニケーションを図る場を提供しています。そして最近の子どもたちは、赤ちゃんと接する機会が少ないので、小中学校で、妊婦体験と赤ちゃんとふれあい体験の機会を設けています。体験型のものでないと身につかないと思います。
15年前と去年の調査を比較しても、1 割は育児が辛いという方がいらっしゃいますね。女性だからすべての人が子育てできるということではないし、それは男性だからすべての人が仕事ができるということではないのと同じではないかと思います。そういう人がたまたま子どもを産んだときに投げ出したくなるという感じ、誰か助けてって言えて助けてくれれば乗り越えられることはあると思いながら活動しています。

仕事の魅力は何ですか。

「子育て・多少の仕事・仲間作り」という三つの幸せが同時に得られることです。
集まるスタッフやお母さんとお茶をしながら、お話したり、笑ったり。たまに夫の悪口を皆で言ったりして、ストレス解消をしています。スタッフはいつも笑っていますよ。楽しいんじゃないかなと思います。何より楽しいことがこと一番ですね。
また人の役に立っているという充実感に加え、多少の対価が得られることです。大きな幸せというよりは、日常の些細な幸せがたくさんあることです。自分ができることをすることで自分の育児や生活時間も兼ねあいをみながら、助け合ってかかわり続けられる仕組みがあります。これはNPOだからできるんですね。でも企業がこんな風に普通の女性が暮らしていける柔軟な要素を取り入れていってくれれば、女性ももっと生きやすくなると思います。現状を考えた時、家事・育児・仕事をすべてやろうとするなら、30%ぐらいずつやるとか。全て100%なんて無理なのです。日本社会は半日働くとか半日育児するとか、そういうことができる社会ではないことが問題だと思います。結局、女性の多くは派遣やパート労働しか選択できないのが実態。働きにくいから、育児をしているうちに「子育ての方が楽しいわ、保育園も入れないような地域で、なんでさらに仕事をしなきゃいけないの」っていう考えになる方も多いのでしょう。女性が働くにあたって高い壁がいっぱいある中で、ワークライフバランスを実現しなければいけないということは本当に問題ですね。

辛いこと・大変なことなど何かありますか。

金銭的なことです。収益にならない事業をしていくときには、スタッフに対し申し訳ないと感じます。実は順調そうに見えますが、来年の心配をしながら、ギリギリな状況で事業を行っています。スタッフ間で意見が合わないときにどういう風にまとめていくかということも大変な面がありますが、それはどのような組織でもあると思います。また、主婦の場合は素晴らしいスタッフも夫の転勤に伴い異動してしまうということがあります。それは本当に残念だと思いますね。
なお、今後も新しい事業が始まるので、スタッフは常に必要としています。私たちの活動の場合、事業は始めると定着して継続事業になることが多いので、減ることはないかなと思います。子育て広場とか子育て支援センター等は行政もやっていますが、うちの場の運営には行政からの補助は一切出ていません。このような形でできるところは他にないと思います。収益的に本当に大変だから、みんなで覚悟して頑張ろうとならなければなかなかできません。私たちは辛いことより、楽しさのほうが上回っているので、ここで働いているのです。スタッフの賃金については、事業ごとに違うので、それぞれみんなでどれを担当するかを決めています。パート労働者の金額をもらう方もいますし、交通費しか出ないほとんどボランティアの方もいますが、みなさん最初に提示した中で金額も納得した上で関わっていただいていますのでトラブルはありません。

若者に伝えたいことは何ですか。

NPOでは一緒に考えて汗を流してくれる人が必要です。おおよそ思い通りにならないことの方が多いので、その時その時臨機応変に対応していかないとなりません。自己実現欲が強すぎると、ギャップが生まれた際に、辛くなってしまいます。理想は理想で持っておきながら現場で動き、自分にできることをやっていくという姿勢が必要です。地に足をつけて活動していってほしいということです。また、ただ自分がこうしたい、ああしたいというだけでは仕事は成り立ちませんので、まずは知るところから始めて、責任を持って経験、我慢を積んでこそ自分のしたいことにつなげていけると思います。

取材日:2008.8.27
取材者:青島由委、坂井優香

Comments are closed.