女性のキャリアアップモデルインタビュー #01

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芦刈 匡子 氏
(サントリー酒類㈱スピリッツ事業部商品開発研究部 部長)

芦刈さんは現在、アルコール酒類の開発と品質保証に係る部門で管理職をしています。結婚、子育てしながら働き続けると決め、周囲の協力を得ながら働き続けてきました。管理する立場になり仕事の幅が広がり、実現したかったことに着手していったといいます。ふたりの子どもは現在大学生。パートナーは2004年海外に単身赴任、芦刈さんご自身も2007年から本社のある大阪の研究所から川崎の商品開発センターに単身赴任をしています。異動しても、私はこれが大切と思える仕事の仕方がそこに根づくよう、仕事をしていきたいと芦刈さんはいいます。キャリアアップのための力は、女性だから、子どもがいるから、時短だからなど、自分に制限をかけずに物事に取り組むことで、おのずと身についてくるとも伝えています。

(H26年1月インタビュー)

現在、どのような仕事をしていますか。

アルコール酒類の開発と品質保証部門の部長をしています。チューハイやカクテル類などの新しい低アルコール飲料分野において、既成概念にとらわれず自由で手軽に飲みやすい商品を開発してきました。商品を開発するためにマーケティングに同行することもあります。たとえばかつて若者がお酒を飲まなくなった原因を探ろうとマーケティング部門等とともに傾向や反応を調査しました。その結果、これまで若者は20歳過ぎから好奇心でお酒を飲み始め、大人の仲間入りを果たす憧れとともに味に慣れ、次第に飲む量も増える傾向がありましたが、今は先輩付き合いも減り、自分が酔った姿を他人にどう思われるかを気にするあまりアルコール度数の高いお酒を飲まなくなってきていることがわかりました。そのような状況から、お酒ではあるけれど少量で「ほろよい」気分になれるものを開発する発想が生まれました。私たちの仕事は、マーケティング部門と同じ視点で新しい市場を開拓し、共有しています。

入社後のキャリアについて教えていただけますか。

1981年に入社しました。現在33年目です。大阪にある研究所の飲料部門に配属となり、缶コーヒーや果汁飲料など、子どもと果汁を飲む大人をターゲットに商品開発や品質保証を担当しました。当時の技術系採用の同期のうち18人は女性でした。技術系採用の新入社員の大半は男性でしたが、仕事は男女差なく与えられました。
入社3年目で結婚しました。2年間で技術系同期女性の約1/3が結婚退職をしました。今も仕事をずっと続けているのは4名です。私自身は、自宅から近いところに就職すると決めた時点で、結婚、子育てをしても働き続けると決めていました。
その後、弊社として参入していない市場への新規食品の開発にも携わりました。植物性乳酸菌飲料や機能性飲料を担当し、仕事の幅が広がりました。2007年に、大阪の研究所から川崎の商品開発センターに異動となり、現在単身赴任をしています。当センターの設立が2004年、その際開発部門のほとんどが川崎市に移転したので、自分もいつかは行くことになるだろうと思っていました。管理職に就任したのは、果実飲料の仕事をしていた2003年です。

今の仕事に就いた経緯を教えてください。

理科が好きで、大学は理学部化学科に進学し、エックス線結晶構造解析を研究していました。就職のときも、事務仕事より実験をしていたい、人々に身近な最終消費財を扱う仕事に携わりたい、自宅から近い弊社で働きたいと思い、弊社を志望しました。

仕事上、ご自身の転機といえる出来事があれば教えて下さい。

植物性乳酸菌飲料を開発した時ですね。それまで、弊社において食品に新規の乳酸菌を配合したことがありませんでした。開発するにあたり安全保証部門にデータを提出して協議するのですが、しっかりとしたデータを出すために、開発食品の安全性を構築するだけの知識についてたくさん勉強しました。それまで飲料の安全性といえば中味中心に考えてきましたが、そのような考え方も理解することができたので、次に安全性を考える際にどのように考えればいいのか、また、企業とお客様、双方の姿勢が一致するプロセスなども理解できました。この時をきっかけに、仕事の幅が広がったように思います。

管理職になってから仕事に対する受け止めや心境はどのように変化しましたか。

課長になったのが43歳の時でした。管理職になってからは、研究員としてではなく、部下を持ちその人たちを評価する立場になるなど、業務の質が変化しました。また、管理職になる前に感じていたこと-もっとこの職場をよくできる、実験計画の立て方や工場やマーケティング部門などの他部門との調整なども状況を見ながらすることができると思っていたわけですが-実現したかったことに着手していきました。今もそうですが、業務が円滑に進むよう、どのような目的でどうしたいのか、研究員がきちんと理解できるよう話をしています。
仕事の幅は管理職になって広がったように思います。なりたくないと考える女性もいますが、そのような時は「目の前に、もう一回実験をすれば面白い結果がでる場面と、悩んで泣いている人がいる場面があったら、あなたはどちらに時間を割く?」と聞いてみています。前者なら技術者タイプ、後者なら管理職タイプである、と。私は後者です。

ワーク・ライフ・バランスについて、仕事以外のプライベートはどのように
過ごしていますか。

出産後2か月で復帰するような時代でしたが、同僚や上司から結婚や出産での退職意向を聞かれることは一切ありませんでした。休みに入る前にはまわりに迷惑をかけないよう、引継ぎの方法やどのようなスケジュールで仕事をするか決めていました。
産後は、残業する日を週1日だけ決め、それ以外は時間をやりくりしながら効率よく働いていたので、したい仕事ができなかったとか仕事量が大幅に減ったといったことは、さほどありませんでした。
結婚する時はパートナーに「働き続けます」と伝えました。事実、夜中泣いた子どもにミルクをあげていたのはパートナーでした。眠りが深い私はだいぶ経ってからその事実を知りました。彼なりに協力してくれていたのだと思います。
両親も、子どもが病気の時や保育園の送迎に協力してくれました。もともと実家近くで働くと決めたのは、このように先々を考えてのことでした。2004年パートナーがオーストラリアに単身赴任し、私も2007年から川崎に単身赴任していますが、子どもたちはもう大学生ですので心配ありません。我が家は共働きなので、晩御飯の支度もパートナーが協力してくれました。
最近の週末の過ごし方は、家事をする他は、スポーツジムに通ったり、本を読んだり、DVDを見ています。ミステリーものが多いですが「仮説と検証」は実験と通じるものがあると思います。

社内の風土、仕事と子育てをめぐる状況について教えていただけますか。

弊社ではテレワークを導入しています。上司に相談し、スケジュールを立てて、事前に人事に申請すれば男女問わず利用できます。取得者数は、最新で2012年のデータになりますが、2,182名にのぼります。10分単位で申請ができるので研究職の方の利用も多いです。現場立ち合いのため24時間稼働する工場に出張する場合、出社してから出張先に行くよりも、テレワークを利用してから工場に直行する方が効率が良い場合もあります。また、研究職の場合、最終工程の書類を作成する時など、一人でつくる方が集中して効率よく作業できたりするので利用するケースもあります。
また、社員は有給休暇を取ることを奨励されており、フレックスタイム制も導入されています。自分で働き方を決められることが働きやすい要因の一つになっていると思います。さらに、WEBシステムが充実しており、WEB会議をしたりモニターを利用して資料を共有できたり、時短と経費の節約にもなっています。

業種特性から、女性が活躍しやすい環境でしょうか。

そうですね。男女ともに活躍しやすい環境だと思います。研修も充実しており、1年目、4年目、10年目に研修があります。また課長候補、課長職以上のマネージャーに昇格する際もありますし、社員が任意で受講できる研修制度も充実しています。テレワークやフレックスタイム制などもそうですが、弊社は女性のキャリア継続も目的とした制度が充実していると思います。

今の職務において大切にしていることがあれば教えてください。

そうですね、自分が異動していなくなっても、私が「これが大切と思える仕事の仕方」が根づくよう仕事をしていきたいと思っています。年5回、課長が部下と面談し、昨年の振返り、今年の計画、中間の振返り、キャリアなどについて話をするのですが、部長級になるとメンバーと直接面談する機会が減り課題を把握することが難しくなるので、私はメンバーを対象に、独自で面談をしています。
また、他の部門との関わりも大切にしています。私たちは飲み物の中味と包材の適合を見なければなりません。たとえば、中味を入れる容器についてなぜ缶とペットボトルで違うのかを説明するにはデータが必要であり、そのために包材開発部門との調整が必要ですし、流通のことであれば流通部門と話をする必要があります。自分が属する部門を超えて包括的に製品のことを深く理解できる働き方をするよう努めています。さまざまな方との会話は面白いですし、製品を総合的に理解することで知見も増えます。そのことがあとで自分の仕事に役に立つと思うのです。話をする時には、他部門が考える商品に対するまなざしを理解し、おもしろいと感じたことを伝えていくことで、他の方たちが興味関心を抱き、関わる人たちの仕事の幅も広がるのではないかと思っています。

今後、手がけていきたい仕事はどのようなものですか。

知的財産として守られる仕事がしたいです。新商品は、技術とノウハウで出来ていますが、食品業界はとりわけノウハウが多いと感じます。それだけでなく、これまでにない技術で新しい商品を作り上げていきたいです。

次に続く女性たちへメッセージをお願いします。

キャリアアップするための力をつけていくにあたり、「女性だからできない」「子どもがいるからできない」「時短だからできない」など、自ら制限をかけない方がいいと思います。その枠とは往々にして自分でつくり出したものです。依然として「私は〇〇だから」と言う女性は少なくないように感じます。何事も取り組んでみなければわかりませんし、取り組んでダメなら仕方がない、次を考えてみる。最初からダメだと決めつけずに物事に取り組んでみたらよいのではないかと思います。

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