女性のキャリアアップモデルインタビュー #09

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T 氏(社会福祉法人春日会 特別養護老人ホーム等々力
施設サービス係長)

Tさんは入社11年目、現在は当法人で看護師として従事する一方、施設サービス係長として新規入居者の調査をはじめ、職員の処遇、勤務調整や相談などの管理業務に従事しています。2人の子どもを育てるうえで働き方を柔軟にし、一般病院から特別養護老人ホームの看護師へと移り、在宅ケアの実情に触れたことが働くうえでの大きな転機となりました。仕事を通じて地域に関わることにより子育て観も変わったといいます。また、自分自身の役割だけでなく、組織や職員の望ましいあり方も明確になったといいます。そして管理職に就いた今、それらの経験を職員に伝えていきたいと強く思うようになりました。それらを伝えることは、ここで働く意義を伝えることと同義であるとTさんはいいます。

(H25年12月インタビュー)

現在、どのような仕事をしていますか。

現在、本部のある「特別養護老人ホーム等々力」から「特別養護老人ホームせせらぎ(療養病床29床、利用者120名)」に出向し、利用者の健康管理や服薬管理等の看護師業務をしています。看護業務はこの施設の後任に引継ぐまでの暫定業務です。
また、本部において、施設サービス係長としても働いています。利用者と職員との調整役である「相談員」とともに新たな入居者の調査をしたり、職員の処遇、勤務調整や相談等をしたりしています。また、利用者のご家族の対応、ケアマネージャーの資格を持っているので、入居者のケアプラン作成等も行っています。その他、入居者が受診する病院、看護師との連絡調整も行います。
看護師の業務内容は専門職のため明確ですが、施設サービス係長の業務は管理業務が中心で、その内容も多岐にわたります。現場対応はフロアの主任を中心に行いますが、対応が難しい場合はともに対応し、必要に応じて上司(副施設長)に報告、連絡、相談をします。そのさじ加減は日々勉強です。現在は出向しての業務が中心のため、本部業務はスタッフと協力しながら処理しています。
勤務時間は9時から18時、当施設と本部を往復しています。看護師が不在だとスタッフも利用者も不安になりますので、火曜と木曜の午後2時間ほどを除き、当施設で勤務しています。現場管理者である本部スタッフも、現場の利用者の健康を第一に考え、業務をバックアップしてくれています。とてもありがたいです。このように、看護師の資格を活かしながら現場で仕事ができるのは本当に楽しいです。白衣を二度と着ることはないだろうと思っていたので、この職場に勤めて10年、施設のためにできることを考え取り組んでいます。

入社後のキャリアについて教えていただけますか。

入社して10年になります。当初は看護師主任として3年間本部で働きました。その後同じ部署に在宅部門ができたので、ケアマネージャーの資格を取得し、2年間在宅ケアマネージャーとして勤務しました。地域包括支援センターの設立を機にセンター長に就任し1年間立ち上げに従事しました。その後、再び本部に戻り、現職に至ります。

現在の仕事に就いた経緯を教えてください。

入社前は一般病院の外科で看護師をしていました。当時、2人の子どもは小学校2,3年生でした。夜勤も土日だけにしてもらっていたものの、子どもたちは不安がりました。夫がいるから、週末だけだから、働いてもいいだろうと思って働いていましたが、子どもは週末の私を「おかしい」と感じていたようです。優しかったり怖かったり、おやつを食べろと言ったかと思えばアイスを食べろと言ったり、「夜のママはなんだかおかしい」と感じながら眠りにつき、再び起きては私がいるか確認する。その時々で、いたり、いなかったり、そのような状況が続くのは、子どもにとってどうなのだろうと考えるようになりました。また、ちょうどその頃、介護保険が施行され、外科で急性期対応をしていた私は快復した方から特別養護老人ホームの話を聞き、興味関心を持っていました。
このような状況のもと、2002年4月に特別養護老人ホーム等々力開設した同時に、看護師として入職しました。それまでいた治療中心の看護の現場と生活中心の介護の現場の違いに最初は戸惑いました。また、仕事をすればするほどケアマネージャーの勉強をしないと介護のことは分からないと感じるようになりました。以降、10月の試験にむけ勉強を始めました。しかし免許を取得しても実際に経験しないと介護のことが分からないと考えました。ちょうど在宅部門の立ち上げを機に、ケアマネージャーとして勤務しました。新人だったこともあり、利用者やご家族のところに行って初めて知る在宅ケアの現状から多くのことを学びました。長らく看護師という専門職できたので、管理職に就任した時は管理業務の内容が見えず不安もありました。対応内容は日々変化し、その時々に看護業務場が入ってくるため就任当初は無我夢中であり、これらの業務を両立させていくことの難しさを感じました。

どのようにキャリアアップを図ってこられたのでしょうか。
転機等があれば教えてください。

入社5年目の頃でしょうか。看護と介護の考え方の違いを知ったことです。看護師をしていた頃は、糖尿病の治療は、甘いものを禁じて血糖値をコントロールするものだと考えていました。しかし在宅介護は、食べて少し血糖値があがっても楽しく生活できるなら翌日節制すればいいと考える、そのことに気づいたことです。在宅を通じ、考え方の幅が広がりました。
地域包括支援センターで介護予防業務に携わったことも転機となりました。地域の方々との触れ合いを通じて市民の健康への関心の高さを実感しました。自分の住む地域で、元気でいたい、そのような思いでいることを知り、自分の置かれた位置といいますか、役目も見えてきました。
このように地域に携わるようになったことで、私自身の地域に対する考え方も変わりました。それまではPTA活動を大変と感じていましたが、子どもは地域のなかで多くの人に見守られ育つものであると感じるようになってから、学校の旗振り当番等もすすんでするようになりました。地域の方も参加しながら皆で子どもの安全を守る。そうして地域は成り立っているのだと思うようになりました。自分ひとりでは子どもは育てられない、であれば、自分にできることで貢献したいという気持ちが生まれ、学校行事にもすすんで参加するようになりました。このようなことに気づくことができただけでも物の考え方が違うように感じます。ぐんと視野が広がったように思います。

このような気づきで今の管理職業務に活きている点があれば教えてください。

戻ってすぐ職員に伝えたいと思ったのは、ショートステイの必要性です。スタッフには、日々家族の方がケアしていることを、私たちは専門性を活かしてより的確にケアし、在宅の辛苦を皆でサポートしていこうと強く伝えるようになりました。どのような利用者もできる限り受け入れ、難しいケースは話し合ってサポート方法を考える。在宅の大変さを目の当たりにしたからこそ得た視点を職員に伝えたいと思いました。そして伝えるだけでなく、自分も一緒に取り組みました。係長に就任して以降、看護師業務のサポートに入ることになり、スタッフとともにさまざまなケースに対応することができました。このように現場で得た知識は実践を通してしか伝わらないように思うのです。在宅に関わり身をもって体験したことは、絶対に伝えなければならないと思いました。
それから、女性の就労継続を維持していきたいとも感じています。職員は四交代制で、看護師には夜勤がありません。その分、夜勤のある介護士の方への負担感が増えているように思います。子育て等の理由などで、夜勤ができなかったり、子どもを預けるところがなかったり、勤めたくても勤められない状況もあります。少しでも女性の職員がやめない職場にしていきたいです。男性介護士が多い一方で入居者は女性が多い傾向にあります。同性だからこそできる介護もあると思うのですが、パートタイムなど働き方が制限され、就労が継続できないのは勿体ないことだと思います。看護師も働き盛りと子育て期が重なり、やむをえず退職してしまうケースもあります。この状況をどうにかできないものかと思うことがあります。

そのような中にあって、なぜこの仕事を続けてこられたのでしょうか。

やはり家族の協力だと思います。夫や私の両親が子どもをみていてくれました。家族の協力があってこそだと思います。また、夜勤がないなどのタイミングの良さもあったように思います。
私自身は、病院に勤務していた30代の頃、院内に託児所があり、一番下の息子を1歳から3歳まで預けて働いていました。ある日託児所の先生に「子どもの具合が悪い時こそ戻ってきてください」と言われました。当時は病院で働いている人のための託児所であって、お金を支払い預けているのに、そのように言うのはおかしい、その場を離れたら患者が困るではないか、そう思っていました。しかしいざ預けてみると間違いだったことに気がつきました。親は代えがきかないのだという前提で子どもを預け育てていく必要があると感じました。この姿勢は福祉から学んだことでもあります。
産休、育児・介護休業制度はありますが、現在、産休以外の休業取得者はおらず、出産を機にやめてしまうケースや、働き方を柔軟にとデイサービスなどに移ってしまうケースもみられます。先頭を切って働いている方も未婚の方が少なくないので、子育てしながら就労を継続できるようにしていきたいです。

このほかに、管理職となり仕事に対する受け止めや心境で変化した点はありますか。

係長になった時に、業務を通じて職員に経験を伝えていきたいと思うようになりました。たとえば身なりひとつにしても自分さえよければいいとしていたら、せっかく皆が努力して業務を遂行していても、介護職の地位を向上させていくことができないように思います。若い段階から、業務を遂行するうえでの社会性を体感しながら、ホスピタリティをもって接することをご理解いただく必要があります。このように、職員のことを考えるとき、管理者としての責任を感じます。
この他にも、体調不良などで職員が休みを申し出たときは気持ちよく休んでもらう、そして戻ってきたらしっかり働いてもらう。それは自分が上司になったときに心に決めたことです。子どもの発熱など、当事者が休みたくて休んでいるわけではありません。どのような理由であっても、気持ちよく休んでいただき、戻ってきたら120%力を出してもらえればよいと思っています。この点は管理職になる前には分からなかったことです。

ご自身が今の職位につくまでに、仕事ぶり等を参考にされた方はいらっしゃいましたか。

看護士は専門職なので基本はひとりで考え決めてきたように思いますが、副施設長はさまざまな機会を与えて下さるように思います。私は看護士ですが、副施設長は介護分野の出身なので、不足している視点などをご指摘くださり、気づきのきっかけになっています。

今の職務において大切にしていることがあれば教えてください。

管理職に必要な要素は、人を大切にすること、人のコミュニケーション力をしっかりとることだと思います。そのことは常に意識しています。
それは日々の業務から学んだことです。一般の看護業務だけに従事していたら、社会福祉法人、地域包括支援センター、そこで働く私たち、それぞれのあり方など、分からないままだったと思います。たしかに看護職に長く携わり、プロフェッショナルになる道もありますが、私は異なる道を選び、さまざまな経験をさせていただいたことで視野が広がりました。在宅の現場に触れ、地域のネットワークに支えられているありがたさを感じ、自分に何ができるのか、介護がどう在ることが望ましいのかが見えてきたことで、何をしていけばよいのかが見えてきました。それを伝えるということは、この場で働く意義を伝えることでもあると思います。

今後、ご自身が手がけていきたい仕事はどのようなものですか。

就任して4年目になりますが、後継者の育成は今後の課題です。私と同じ世代で、結婚し、子育しながら働いている女性は極めて少ないですので、次世代が働き続けることができるよう就労継続サポートをしていくことができたらと思うことがあります。子育てはほんの一時ですので、一時休職をしても復帰できる環境があってもよいと思います。

次に続く女性たちへメッセージをお願いします。

多くのことを経験してみることかと思います。やはり実際に現場に入り、触れ、体感することで見えてくるものもあります。思えばここまで仕事を続けられたのも皆に支えられてのことであり、とても感謝しています。そのような気持ちを忘れないことも大切だと思います。

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