女性のキャリアアップモデルインタビュー #02

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荒滝 新菜 氏
(富士通㈱ストレージシステム事業本部 マネージャー)

荒滝さんは現在、情報を記憶保存するストレージ装置の開発・提供する部門のマネージャーをしています。昔からモノづくりが大好きで、大学は理系に進学。入社当初から「面白い技術をつないで世に送り出したい」との想いを強く抱いてきました。業務上困難なケースに遭遇すれば失敗する不安もありますが、そのような経験・場数を何度も踏むことで、乗り越えた後の達成感への期待、次もできるはずだという信念が不安や恐怖感を上回るようになったといいます。管理職になってからは、その想いをはるかに超える仕事の広がりを感じているとのこと。荒滝さんは技術を持つことの強み、技術で勝負できる環境は、女性にも活躍の機会を開くといいます。

(H25年12月インタビュー)

現在、どのような仕事をしていますか。

現在、ストレージシステム事業本部に所属しています。当本部ではお客様の業務に不可欠な情報を記憶保存する装置(ストレージ装置)を開発、提供しています。ストレージ装置はお客様の大切な情報を、システムのあらゆる障害が発生しても守るという重要な役割を担っています。ビッグデータ・クラウドの普及に代表されるように、世の中で扱う情報量は2013年から2020年までに10倍に増加すると言われており、情報システムを構築する上で不可欠な装置となっています。お客様の要件も多様化しており当本部でも様々な製品を提供しています。私はそのうちの一つの開発プロジェクト責任者として開発全体を俯瞰する立場にあります。開発が中心ではありますが、それだけでなく、販売するための戦略を立てたり、商品化するための製造ラインを構築したり、海外の協業ベンダと打ち合わせをしたり、もちろん製品に障害が起きた場合にはお客様の所へ伺うこともあります。当本部は他本部に比べて少数精鋭といいますか、少人数で構成されており幅広い業務に携わっています。開発以外の業務も数多くこなさなければならず大変なこともありますが、開発一辺倒ではないこの職場がとても気に入っています。色々な業務に関わりたいと思っていますし、それをマルチタスク的にこなすことが得意だという自分の特性にもあっていると思っています。
私が携わっている開発の仕事はよく難しそうと言われるのですが、たとえるならば料理と同じだと思っています。料理をする際、食べる人を思い浮かべてメニューを決めます。次に必要な食材を買い、手順を決めて料理をつくり、味を整え仕上げ、お腹がすいたときに合わせて提供します。開発の仕事もそれと似ています。目的とするものをつくるために必要な事を一つ一つ分解し、必要なものは調達します。たとえば「サーバー」をつくる例で考えてみると、CPUがあり、ボードがあり、記憶するハードディスクがあり、そして中で動くプログラムがある。それぞれの機能を組み合わせて目的の物を作り上げていきます。慣れてしまえば出来ることだと思っています。面白いですよ。

入社後のキャリアについて教えていただけますか。

入社して13年目になりますでしょうか。昔からものづくりが大好きで、大学では工学を専攻していました。技術職として入社し、最初の部署ではハードウェア開発を担当していました。そのなかで主にLSI/FPGAの論理設計を担当しました。弊社特有の機能や高速伝送を実現しているデバイスであり、開発を通じて様々な独自のノウハウを学ぶことができました。10種類ほどのLSI設計担当者、リーダーとして6年ほど経験を積んだのち、設計と並行して、商品化業務にも携わるようになりました。拡販資料作成、モデル決め等の活動を通じて改めてお客様起点で製品を作るということの大切さと難しさ、そして製品を世に送り出すために開発の何倍もの人数の社員が一丸となっているということも知りました。かつて自分が世に出した製品がお客様先で障害を起こしたのもこのころです。お客様に大変なご迷惑をおかけしてしまったことは痛恨の極みでした。海外出張しベンダと協力して原因を突き止め、ファーム部隊・SE部隊と連携し障害が起きてもシステムを止めないよう対応していきました。このようなご迷惑は起こしてはならないと、様々な開発改善を行いつづけています。その後ストレージとして新市場への新たな製品開発のために新設された事業部に移りました。
ストレージ市場は成長を続けていますが、その中でも成長著しい新しい市場に向けた製品を開発するため、社内外でのテストマーケット、コンセプトや開発項目の練り直しを何度も何度も行っています。まだ認知度も低く苦労することもありますが、完全に一から製品を作り上げるチャンスはめったにめぐってくるものではありません。このようなプロジェクトで活躍できることはこの上ない幸運だと思っています。
現在の職に就いたのもこの頃で、2013年4月でした。弊社には社員等級制度というものがあり、SPというマネージャー前段のポジションがあります。このポジションに就いた時にいつかマネージャーになるという覚悟はできていましたので、不安もありましたがやってみようと前向きに受け止めることができました。弊社はマネージャーになるための研修がとても充実しており、上司の指導もあり、スムーズに幹部社員としての一歩を踏み出せていると感じています。

スキルアップはどのように図ってこられたのでしょうか。

目標とするキーパーソンを目指していたことが結果的にはスキルアップになっていたように思います。そのキーパーソンは2名おり、いずれも直属の上司でした。エンジニアとしても高い技術・知識を持ち、とても尊敬できる方で、10年近く同じ職場で仕事をしました。私をSPにまで引き上げてくださり、さまざまな相談にも応じてくれました。現在の上司はマネージャーとして必要な事や考え方を適切なタイミングで示してくださいます。上司の方からは日頃さまざまな相談やアドバイスをいただいてはいますが、マンツーマンで話ができるのはありがたいことだと思っています。半期に一度行う目標設定面談では、自分がよかったと感じている点に対して異なる立場からさまざまな意見やアドバイスをいただけるので、改めて自分の仕事ぶりや成果、課題を確認できるいい機会であると捉えています。

なぜこの仕事を続けてこられたのでしょうか。仕事における転機等があれば教えてください。

入社して3年目で、初めて開発リーダーを任された時のことでしょうか。当時は経験も浅く設計や検証方法に問題があり、社内の検証段階で多数の問題を出してしまいました。特に大きな障害が1つあり、それは私たちが作製した部分なのか、流用したモジュールなのか、外部のハードウェアなのか、ファームウェアの動かし方なのか、3か月原因が掴めませんでした。2,000ページに及ぶ昔の回路図を黙々と読み返し、原因をつき止め解消しました。他の障害も上司・先輩方のサポートを受けながら一つ一つ取り除き、最後に装置に組み込んで実施した性能測定で目標通りの性能向上を出すことができた時には達成感でいっぱいでした。そうしてやり遂げたことは、その後の自信になりました。こういった経験・場数を何度も踏むことで、今の自分にとって未知なことにチャレンジし乗り越えた後の達成感への期待、今回も出来るはずだという信念が、失敗するかもしれないという不安や怖さを上回るようになりました。

管理職となり、仕事に対する受け止めや心境はどのように変化しましたか。

ひとつは、部下に対する責任を持つようになったことです。部下が業務をきちんと遂行できるよう、やる気を引き出すアプローチをすることが大切だと意識するようになりました。時には家庭状況も踏まえてケアをすることも必要です。自分が働きかけたことで、ある業務に対するスタッフのパフォーマンスがあがるのを目の当たりにし、チームワークがよくなっていくことを感じた時は、私自身もやりがいを感じます。このようなことはマネージャーになるまで意識してはいませんでした。就任したからこそ得られた視点です。
もうひとつは、業務が格段に広がったことです。マネージャーであること、現在所属する部署が新製品を開発しているということから社内のさまざまな情報がたくさん入ってきます。これまでは、入ってくる情報といえば工場、品質、購買にまつわるものでしたが、マネージャーになった今、異なるプロジェクトや製品、通信、サーバー等の部署からも情報が入ってくるようになりました。これらの情報を取捨選択し、判断し、業務を遂行していくことは、とてもやりがいを感じます。失敗したらその責任をとらなければならないのですが、それ以上に、予想外の面白さに出くわしたり新しいことを考えられたり、チャレンジできる面白さの方が勝っているため、前向きに関わりたい気持ちの方が強いです。
入社当時から面白い技術をつないで世に送り出したいとの思いを強く抱いてきましたが、今、その頃の想像をはるかに超える仕事の広がりを感じています。会社としてさまざまなことを手がけているからこそ自分が携われるフィールドもたくさんあるのだと感じます。
弊社では、技術のプロフェッショナルとして働き続けることも可能です。マネージャーという仕事は、視野を広げ、さまざまなことにチャレンジしたい人、そのような役割を担いたい人に適している役割だと思います。

今の職務において大切にしていることがあれば教えてください。

マネージャーとしての職務として、プロジェクトの推進、関係部門との協調以上に、最も重要と考えていることがあります。メンバーのやりがいと幸せです。一人一人のもつ個性や特性を生かし、相補的相乗的に結合して最大限力を発揮できるように配慮することで総体的に高い生産性をだすことができるようにすることがマネージャーの役割だと考えています。マネージャーになってから一人一人と対話し信頼関係を構築することから始めました。グループ会議ではあえて雑談から始めるなど話しやすい雰囲気を作ってから業務相談を行う、極力1対1で話す、声をかけるなどを心掛けました。業務をただ部下に均等に割り振るのではなく、一人一人の特性、やりたいと思っていることをこうした対話から把握し、成長を加味して業務を割り振るように心がけています。自分自身の人としての成長が必要だと痛感しています。
なお、人材の観点でいえば、弊社は本部内にメンタルヘルス予防のためのスタッフを配置し、ケアを徹底しています。予兆を早く見抜くことが大切ですので、私もマネージャーとして部下が何を考え困っているのかを早めに察知するよう心がけています。マネージャーに就任する際の研修にも、それらの事項は盛り込まれています。
また、本部独自の取組みとして、本部内組織の活性化、将来に向けた人材育成の一環で2009年から「やりがい向上プロジェクト」を運営しています。一人一人の能力とチームワークやリーダシップによって組織力は増します。一人一人が自身の能力向上への意欲を持っていい仕事をしていく組織をめざし、まず幹部社員自らが率先して本部のやりがいを向上するための課題抽出と施策実施を行います。これを皮切りに、部員が自由にアイデアを提案できるグループ活動まで、さまざまな活動を行っています。やりがいを阻む要因は何なのか、そのために必要なことは何なのかを自ら考え、自由に提案できるのでとても面白いです。組織風土を変えるのは難しいと言われていますが、継続して活動を続けることで組織の雰囲気が変わってきたように思います。

社内の風土、業種特性から、女性が活躍しやすい環境でしょうか。

技術系の特性なのか、職位を問わず、それぞれの人が自分の担当範囲を持つエンジニアとして、上司であっても対等に発言できる雰囲気があります。職位に関係なく、社長相手であっても「xxさん」で呼び合います。そういう意味で風通しが良い会社であると感じています。
弊社の取り組みも多様です。ダイバーシティ推進室では女性リーダーを対象としたダイバーシティ研修を実施しています。私自身もG4(SPの前のステージ、リーダー級)昇任時に参加しましたが、その後もいつでも参加が可能です。また、在宅勤務も可能です。弊社では、2010年から在宅勤務制度を導入しています。育児・介護事情等のある方およびリーダークラスで在宅勤務において生産性の向上が図れる方を対象に実施しており、2013年度末現在で約90名が利用しています。さらに、時短勤務制度もあります。こちらは育児や介護事情のある場合に利用可能で、2013年度末現在で約530名が利用しています。その働き方はすばらしく生産性が高く、残業している方と比べ、時間単位の仕事を質・量ともに比較すると異なるのではないでしょうか。そのような方もサポートしていきたいと思います。
組織における女性の割合ですが、職場は現在、職員25名です。実施しているプロジェクトメンバーは80名います。女性はそのうち1~2名ほどでしょうか。以前在籍していた部門でも30名中1~2名程度でした。関係会社のスタッフを含めるとそれ以上になりますが、現在部下は4名で、それらも全て男性です。たしかに女性の方が話を持ちかけやすいことはありますが、仕事をするうえで男性が多いから仕事がしにくいと感じたことはありません。技術職は、女性でも男性でも、その技術に対する評価、つまり、業務上の成果で評価していきます。その厳しさと面白さ、技術で勝負できる環境に身を置くことができます。そのような意味で女性に活躍の機会が開かれていると思います。

現在の仕事に就いた経緯を教えてください。

私はものづくり、技術が好きなので、大学は工学部の電子工学科に進学しました。もともと星に興味があり、最初は理学部(物理・天文学)を学びたかったのですが、進路選択の際、推薦枠に物理学を学べる大学がなかったことなどから、二番目に興味のあった電子工学を学べる工学部に行くことを決めました。
理系で技術系を選択する女性は、まだまだ少ないです。自分も親に理系に行くと伝えた時は驚かれました。そういった背景からも、工学部には「なんとなく工学部に来ました」という女子学生はほとんどおらず、どうしても技術系の大学に行きたいのだという強い意志を持った方が多いと思います。結果として非常にポジティブかつ積極的で、優秀な学生の方が多いように感じます。ただ今後は、もう少し「なんとなく工学部に来ました」というような、当たり前に技術系の分野にも女性がたくさん進学できればいいと感じています。そのためにも多くの女性の活躍事例が身近にあるのがいいと思います。

ワーク・ライフ・バランスについて、仕事以外のプライベートはどのように
過ごしていますか。

仕事も好きですが、それ以外は、ゴルフ、ダイビング、バドミントン、天体撮影でしょうか。仕事も家庭も趣味もどこまでやるかは自分で決めてどれも楽しんでいます。パートナーもいきいき仕事をしていることを認めてくれており、理解があったから結婚できたのかなとも思います。
出産、子育てはこれからですが、自分次第かなとも思います。職場復帰者の採用育成コストを考えると弊社は制度環境も充実していますので、あまり心配はしていません。 また、もし自分が出産期の部下を抱える上司なら“育児休暇を取得して1年ほど休んでも大丈夫だから必ず戻ってくるように”と伝えると思います。IT系の会社ですので、在宅勤務が簡単にできるような仕組みづくりをしていきたいです。出勤するか休むかの二者択一ではなくて、体調不良や子どもの看護、親の介護、定年後の再就職など、多様な働き方を支える仕組みを技術者としてサービス提供できればと思っています。

今後、ご自身が手がけていきたい仕事はどのようなものですか。

入社当初からの思いでもありますが、最新技術を製品にしてお客様に提供する、「もの作り」をベースに仕事をしていきたいです。社内には様々な分野の高い技術を多く持っていると感じており、これらをつなぎ新たな価値を生み出すということをしていきたいです。開発中の製品は、ハードウェア・ファームウェア・ソフトウェアの集大成です。自分としてはさらにミドルウェアやクラウド技術も組み合わせ、オール富士通ならでは、富士通でしか実現できない製品を提供していきたいです。そんな可能性を胸に、これからもワクワクと仕事に取り組んでいきたいと考えています。

次に続く女性たちへメッセージをお願いします。

大学に進学するときに将来何がしたいのか明確になっていなくても、在学中は、将来自分の柱となる技術、自分の生きる糧となる元を学ぶ場として捉え、主体的に学んでほしいと思います。そうして身に着けた基礎があって就職すると、技術もさらに身につき、実力もつきます。「これだ」と思えるものがあって、その技術を糧に仕事を楽しめたら、それはとても魅力的なことです。技術系分野は実力主義、それは実力さえあれば認められ、活躍できる職場であるということです。女性にこそ、技術系分野に積極的に入ってどんどん活躍していってほしいです。

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