『対岸の家事』
発行日:2021年6月
著者:朱野帰子
出版社:講談社文庫
発行日:2021年6月
著者:朱野帰子
出版社:講談社文庫
専業主婦である詩穂は、助け合って子育てができる“ママ友”を探していますが、周囲は共働きが多く、なかなか見つけることができません。児童支援センターで出会った育休中の母親達とは話が合わず、仲良くなるどころか、陰で「専業主婦は絶滅危惧種」「時流に乗り遅れている」などと言われてしまう始末。かろうじて親しくなった育休中の“パパ友”には「この国には、女性を家事に専念させる余裕はない」となぜか説教されてしまいます。しかし専業主婦不要論を唱える彼らも、しだいに家事の大変さに圧倒され、限界を感じていくことに…。
家事という一言で表される言葉の裏には、膨大な労働や精神的負担が含まれていますが、この物語には、その営みが過小評価されている現実が浮き彫りにされています。登場人物たちが抱える葛藤がリアルに描写されていて、それぞれの立場に共感し、成長を応援できることもこの小説の魅力です。
日々家事に奮闘している人にも、あまり意識せずに暮らしている人にも、是非読んでいただきたい一冊です。